認定補聴器技能者のブログ『補聴器通信』 補聴器の価格について① 東武百貨店5階補聴器さろん
2024.1.27 池袋東武店, 補聴器通信, 補聴器, コラム
東武百貨店池袋店5階10番地補聴器さろんの豊川です。いつも当店をご愛顧いただき、ありがとうございます。
以前のコラムで補聴器の購入価格帯としては10万円~20万円が多いと書かせていただきました。
(Japan Trakより)
では、実際に補聴器の価格差というのはどのようなところにあるのか、ということをご紹介させていただきます。
不定期で数回のシリーズにてご紹介いたしますので、お読みいただけると嬉しいです。
まず、一番に聞かれることですが「補聴器と集音器は何が違うのか」ということです。
一般的に「補聴器=価格が高い」「集音器=価格が安い」「性能の差は良く分からない」といったイメージを持たれる方が多いかと思います。
今回は、この「補聴器と集音器の違い」について、掘り下げてお話しさせていただきます。
補聴器と集音器の違い
① 管理医療機器であるかないか
最も大きな違いはこの点です。
補聴器は「管理医療機器」に指定され、「医療機器」の扱いになります。
集音器は「家電製品、オーディオ機器」の扱いになります。
② 管理医療機器とは?
医薬品医療機器等法(薬機法)に定められた医療機器には4つのクラスが存在します。
補聴器は〈クラスⅡ〉の管理医療機器に分類されており、副作用又は機能の障害が生じた場合に人の生命及び健康に影響を与える恐れがある、と定義されております。同じ〈クラスⅡ〉には、MRI装置や消化器用カテーテルなどがあります。ちなみに最もリスクが高い〈クラスⅣ〉は高度管理医療機器としてペースメーカーなどが分類されています。
このように補聴器は管理医療機器になるため、これを業として販売若しくは貸与しようとする者は、あらかじめ営業所ごとにその営業所の所在地の都道府県知事に厚生労働省令で定める事項を届け出なければなりません。
③ 補聴器と集音器の性能差(管理医療機器としての観点)
(1)出力制限機能の有無
上記のように補聴器は管理医療機器、クラスⅡですから、装用をしている中で人の生命、および健康に与える影響を少なくしなくてはなりません。
そこで出てくるのが、「大きすぎる音を抑制する機能」=「出力制限機能」です。
管理医療機器としての補聴器にはこの機能の搭載が義務付けられています。
補聴器は小さな音は増幅し、大きすぎる音は抑えるという動作を常に行っています。
難聴者といっても大きすぎる音を不快に思うのは健常者と同じです。
むしろ、難聴の方の方が大きすぎる音を嫌う傾向があります。
集音器は音の大小は問題にしません。集音器のマイクが拾った音をすべて一定程度大きく増幅します。以下の例のようになります。
例)
補聴器の増幅が30㏈の場合
通常会話音の場合
・会話音60㏈で補聴器に入力 → 補聴器が30㏈増幅 → 装用者には90㏈で聞こえる
大きな音の場合
・ドアが突然閉まる音が80㏈で補聴器に入力 → 補聴器は本来は30㏈増幅するが、耳に110㏈で入るとうるさすぎるので、わざと増幅を抑えて10㏈の増幅 → 装用者には90㏈で聞こえる
*実際には低域~広域まで各周波数ごとに調整・UPを行うので、上記のような簡単な式にはなりません。
集音器の場合(仮に30㏈で増幅。どれくらい増幅しているかは不明です)
通常会話音の場合
・会話音60㏈で集音器に入力 → 集音器が30㏈増幅 → 装用者には90㏈で聞こえる
大きな音の場合
・ドアが突然閉まる音が80㏈で 集音器に入力 → 集音器が30㏈増幅 → 装用者には110㏈で聞こえる ⇒ ウルサイ、響く、耳が悪くなる
ウルサイで済めばまだ良いのですが、音の環境によっては必要以上に大きくなり、音響外傷といった障害を引き起こす原因にもなります。
イヤフォンを長時間利用して大音量で音楽鑑賞やテレビ視聴をしていると、耳が悪くなるといったことが引き起こされるのも似た理屈です。
ただし、既に触れたとおり集音器は医療機器ではなく、家電製品扱いで音が大きく聞こえる機器という位置づけですので、そこに対しての安全策は義務付けられていません。
(2)音量・音質の調整の可・不可
聴力はその方によって差があり、右耳と左耳でも差がある方もいらっしゃいます。
細かいお話しは次回に触れさせていただきますが、補聴器はその方の聴力、慣れ具合、聞こえ具合等を勘案し、音量・音質の調整を行うことで真価を発揮します。
集音器には音量を上げる、下げるの機能を持つものが多いですが、全体的に上げる下げるのみのため、個人にあった聞こえの調整は出来ません。
④ 補聴器か集音器か
「聞こえにくい」といった場面は人それぞれ違うと思います。
ただ、本人は聞こえにくくないと思っていても聴力が回復しているわけではなく、聴力は悪いままです。
「聞こえにくくない」=「聴力が悪くない」というわけではありません。
一度下がった聴力は基本的にそのまま回復することはありません。
ですので、「聞こえにくい時に補聴器を使用する」のではなく、「常に補聴器を使用して下がった聴力をカバーする」ことが重要になります。
このことから、常時装用を考えた場合、集音器はお勧めいたしません。
認可をきちんと得ている管理医療機器の補聴器を使用することをお勧めします。
まとめ
集音器は補聴器に比べ、安価で手に入りやすい商品かと思います。
短時間で必要時のみ使用する、普段は全く使用しないという方には利用しやすいでしょう。
ただし、聞こえのことを考えたときには、その使用方法はお勧めしにくいのが実状です。
色々な新聞広告、ネット広告が出ている昨今、広告を目にする機会が増えているかと思います。
価格だけでなく、まずは補聴器なのか?集音器なのか?をしっかり確認したうえでの検討をお勧めいたします。
*すべての集音器を調査したわけではありませんので、機能面に関しては一般的なお話です
次回は「通信販売補聴器」との違いについてお話しする予定です。