認定補聴器技能者のブログ『補聴器通信』 骨導式補聴器② 東武百貨店5階 補聴器さろん

2024.6.21 池袋東武店, 補聴器通信, 補聴器, コラム

東武百貨店池袋店5階10番地 補聴器さろんの豊川です。いつも当店をご愛顧いただき、ありがとうございます。
こちらのコラム『補聴器通信』では、イベント情報とは別に、聞こえや補聴器のお役立ち情報を配信いたします。
不定期ですが是非お読みください。
骨伝導式補聴器②
前回は骨伝導式補聴器が使える方についてお話しさせていただきました。
今回は骨伝導式補聴器の特徴についてお話しさせていただきます。
骨伝導式補聴器の仕組み
骨伝導式補聴器は耳の中から入ってくる空気の振動ではなく、側頭骨を揺らした振動を内耳に伝えることで音を増幅します。
そのため、振動板と呼ばれる機械(補聴器)で側頭骨を挟む必要があります。
振動板で側頭骨を揺らし、内耳(蝸牛)内のリンパ液を揺らすことで増幅した音を脳に伝えます。
骨伝導式補聴器のメリット
①耳を塞がない
気導式の補聴器はどのような形であれ、耳穴へ補聴器本体、もしくは耳栓を挿入する必要があります。
気導式の補聴器で耳穴を塞ぐとどうしても詰まった感じになり、かゆみや炎症を訴える方もいらっしゃいます。
耳穴を塞がないことで開放感が得られ、快適に使用できます。
先天的もしくは事故や手術等で後天的に耳穴が小さいなどの理由で気導式補聴器が使用できない方でも補聴器が使用できます。(伝音性難聴の場合)
②自分の声が気にならない
前回に少し触れましたが、ヒトは耳穴が塞がれると骨導音が強調され、自分の声が響きやすくなります。
骨伝導式補聴器は耳穴を塞がないため、この点が解消されます
骨伝導式補聴器のデメリット
①感音性難聴に対応できない
前回お話しさせていただきましたが、骨伝導式補聴器は伝音性難聴の方が対象となります。
一般的な加齢性難聴の方は感音性、混合性難聴の為、骨伝導式補聴器では対応できません。
②高度・重度の難聴に対応できない
難聴度が比較的軽い方には対応できますが、高度・重度の方には対応ができません。
あまりに大きな音になるように増幅すると、骨伝導式補聴器全体がガタガタ揺れてしまい、音質が担保できないためです。
③位置がずれると聞こえにくい
側頭骨に振動板を当てることで、内耳へ音を伝えます。頭を挟み込むような形で装用しますが、装用の位置がずれると内耳へ音が正しく伝えられなくなり、聞こえにくくなってしまいます。
④目立つ、種類が選べない
形についてはこの後紹介しますが、基本的に大きなものになります。メガネタイプは補聴器に見えないとは言えますが、形としては目立ちますし、販売しているメーカーも少ない為、選べる種類も少なくなります。
骨伝導式補聴器の形
メガネ型

眼鏡のツルの前方にマイクがついていて、後方に振動を発生させる振動板がついています。
補聴器には見えないデザインという点がメリットですが、一般的なメガネに比べるとツルの部分が太く重くなり安定感が悪い、一般のメガネフレームのようなカラーやデザインといった種類が無い点がデメリットになります。
カチューシャ型

一番下側の部分に振動板がついている形になります。安定感はメガネ型に比べると良い為、動き回っても外れにくく音の来る方向が分かりやすいのがメリットです。
本体が大きく目立ってしまうのがデメリットになります。
骨固定型補聴器(baha)
頭がい骨にチタン製の部品を埋め込み、音を聞く補聴器です。
保険適応の手術ですが、手術を受けることができる対象者には耳の形、聴力レベル、年齢等の制限があります。
軟骨伝導補聴器
外耳の軟骨部分に振動板を当て、音を聞く補聴器です。
正確には「骨伝導」ではなく、「軟骨伝導」になります。見た目は気導式の耳掛け型補聴器と似たデザインなので、メガネ型やカチューシャ型のように頭を挟み込む必要はありません。
比較的、新しい技術の為、購入できる店舗は限られています。
まとめ
骨伝導のイヤフォン、ヘッドフォンの増加に伴い、問い合わせの増えている骨伝導式補聴器ですが、気導式補聴器が2~3年に1度の新商品が発売され、改良が続けられているのに対して、ほとんど改良は見られません。
(骨固定型補聴器、軟骨伝導補聴器については研究開発が進められていますが、一般の販売店では購入不可)
主な理由としては2つ。
①骨伝導式補聴器が有用なのは伝音性難聴の方
伝音性難聴の方の多くは治療等で改善が見込まれるケースが多いため、補聴器を使用しなくても聞こえが改善できる。
②音質の担保が難しく、軽度の方に限られる

気導式補聴器の場合
音の伝達経路:外耳→中耳→内耳(蝸牛)→聴神経→脳
外耳、中耳を音が通る際に鼓膜や耳小骨によって、元々の音は20~30倍に増幅されて内耳に届きます。
骨伝導式補聴器の場合
音の伝達経路:側頭骨(頭がい骨)→内耳(蝸牛)→聴神経→脳
外耳、内耳で音が増幅されないために補聴器から直接内耳へ音を増幅して届ける必要があります。
より大きな音を伝えると、振動板がずれないように側頭骨への押さえつけを強くする必要があります。
押さえつけが強すぎると、痛みや血行不全等の症状を発生させる原因となります。
そのため、軽度の方が対象となります。
以上の2点が理由で快適に使用できる方が限られています。当店でも気導式補聴器を基本的にはお勧めしております。
お試し用の骨伝導式補聴器は取扱いをしておりません。(お取り寄せは可能-メガネ型に限る-)
骨伝導のイヤフォンやヘッドフォンに関しては、災害時に消防隊員が通信を骨伝導イヤフォンで聞きながら、生の音を自分の耳で拾う、一般でもテレビの音声を骨伝導イヤフォンで聞きながら、家族の会話は自分の耳で聞く等の活用をされています。
骨伝導式イヤフォンの例

ここまで2回に分けて骨伝導式補聴器についてお話しいたしました。
東武百貨店池袋店5階10番地補聴器さろんでは、聞こえのお悩みを幅広くご相談承っております。
どうぞお気軽にご相談くださいませ。
*お問合せ:TEL.(直通)03-5951-8030